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欧州自動車メーカーはなぜBEV化を急ぎ、そして後悔し始めたのか

投稿日:2025年11月10日

アウディとポルシェが示した“現実回帰”

ここ数年、自動車業界はBEV(バッテリーEV)化こそ正義という、ある種の集団催眠のような状態にありました。

各メーカーは競うように、

・「◯年までにEV専業」
・「内燃機関の終焉」

を掲げ、それに疑問を挟むこと自体が“遅れている”とされる空気。

しかし今、その前提が音を立てずに崩れ始めています。

ポルシェがBEV戦略の修正を認めたこと、そしてアウディが描いた極端すぎるBEVシナリオは、この流れを象徴する事例です。

BEVが正義と信じたポルシェの誤算

※参照 carview! 

 

アウディの「奇数=内燃、偶数=BEV」という危うい発想

アウディは一時期、非常に分かりやすいメッセージを打ち出しました。

  • 奇数モデル(A3 / A5 / A7 など)=内燃機関
  • 偶数モデル(A4 / A6 / A8)=BEV

そして、

「アウディ、2033年までに内燃機関を搭載した車の製造を原則終了」

フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下の自動車メーカーの電動化重視が加速している。アウディは6月22日、2026年からバッテリー電気自動車(BEV)モデルのみを上市し、2033年までに内燃機関を搭載した車の製造を原則として終了する意向を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。アウディはEV化を加速するべく、2021年にはBEVモデルを内燃機関搭載モデルより増やし、2025年までにはBEVモデルが20を超えるとしている。

参照:JETRO(日本貿易振興機構)

 

 

「2033年までに内燃エンジンを段階的に廃止すると宣言」

アウディ2033年で全電気自動車化

参照:アウディジャパンプレスセンター

 

 

「乗用車に関しては電気自動車が正しい」

参照:2024年12月に開催された電気自動車の未来を語るトークセッション

 

 

一見すると整理された戦略に見えます。

しかしこれは、マーケティング都合を技術とユーザー体験より優先した判断でした。

 

なぜ問題だったのか

 

長年積み上げたネーミング資産を自ら破壊

A4、A6、A8という名前は、

  • 法人需要
  • プレミアムセダンの基準
  • ブランドの“軸”

として何十年もかけて築かれてきました。

それを、

「今日からA6はBEVです」

と急に切り替える。

これはユーザーにとって進化ではなく断絶です。

 

② BEVを“選択肢”ではなく“押し付け”にした

A6を買う層は、

  • 長距離移動
  • 高速巡航
  • 充実した給油インフラ

を前提に車を選んできた層です。

そこに対して、

「次のA6は充電してください」

というのは、合理性より思想の押し売りに近い。

 

内燃とBEVを“数字”で分けた安直さ

本来、

  • どのパワートレインが適しているか
  • どの使われ方を想定するか

で決めるべきところを、車名の偶数・奇数で決める

これはユーザー目線ではなく、社内説明とIR向けの分かりやすさを優先した設計です。

つまり”楽なのは誰”か。

もし本当にユーザー目線なら、

・A6(内燃)

・A6 e-tron(BEV)

・A6 PHEV

のように、同じ名前の中で選ばせるはずです。

ところが偶数はBEV、奇数は内燃とすると、なぜA4はEVでA5はガソリンなのか、どちらが上位なのか、使い方にどう違いがあるのかをユーザーが自分で学ばないといけない。

分かりやすくなっているのは実は「メーカー側の整理」であって、購入者の理解ではありません。

さらにはアウディディーラー、営業現場の説明負担がむしろ増えてしまう。

ユーザーはこう聞きます。

「じゃあ、前のA6の後継はどれですか?」

営業は毎回、

・新しいルール

・旧モデルとの関係

・なぜ変えたか

を説明しなおさなければならず販売効率を下げる設計です。

 

ポルシェが認めた「BEV一本化の誤算」

ポルシェはより正直でした。

BEVそのものは否定しない。

しかし、

  • 需要
  • 利益率
  • ブランド体験

これらが想定通りに噛み合わなかったことを、比較的オープンに認めています。

特にスポーツカーブランドにおいて、

  • 重量増
  • フィーリングの変化
  • 音と振動の喪失

は、致命的な価値の変化になり得ます。

ポルシェですらそうなのです。

アウディがより大衆的なプレミアムブランドとして、

同じ賭けに出た結果は、想像に難くありません。

 

BEV化を加速させたのは「技術」ではない

ここで重要なのは、BEV化の主因は技術革新ではなかったという点です。

  • 環境規制
  • 補助金
  • ESG投資
  • 欧州政治

これらが複合的に作用し、メーカーは選択ではなく同調を迫られました。

結果、

  • 本当に売れるか
  • ブランドと合うか
  • ユーザーは幸せか

という問いは、後景に追いやられた。

アウディの偶数・奇数戦略は、まさにその“時代の空気”を体現した判断だったと言えます。

 

今、メーカーは静かに方向転換している

表向きには言いませんが、

  • EV投資の減速
  • PHEVの再評価
  • 内燃機関の延命
  • マルチパワートレイン戦略

は、ほぼすべてのメーカーで進行中です。

アウディも例外ではありません。

当初描いたような明確な「偶数=BEV」路線は、事実上トーンダウンしています。

しっかりA6で内燃機関を出してきます。

・理念:偶数=BEV

・現実:A6は内燃も出す。

このズレこそが、BEV一本化が現実に合わなかった証拠。

結局、偶数=BEVというルールは、A6という中核モデルの前で破綻した。

 

ユーザーは、思想より“使い勝手”を選んだ

結局のところ、BEVに慎重だったのは環境意識の低い人たちではありません。

実際に使ってみて違和感を覚えた普通のユーザーです。

車は、

  • 生活
  • 仕事
  • 趣味
  • 感情

が密接に絡む道具です。

それを「規制」と「数値目標」だけで再定義しようとすれば、どこかで必ず無理が出る。

 

おわりに:これからは“正解を一本にしない”時代

BEVは正解のひとつ。

しかし唯一の正解ではありません。

  • BEV
  • HEV
  • PHEV
  • 内燃機関

用途と価値観に応じて併存する世界こそが、本来の進化だったはずです。

アウディの奇数・偶数戦略、ポルシェのBEV修正。

これらは後退ではなく、ようやく現実に戻ってきた証拠なのだと思います。







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